ゴ★ゴ☆ゴリランド




ぺけぴーです。



現在アストルティアには七つの種族が共存共栄している。即ち、オーガ、ウェディ、エルフ、ドワーフ、プクリポ、人間、そしてゴリラである。まだまだ認知度が低く、オーガと混同されやすい我々ゴリラ。このままではいけない。ゴリラのゴリラによるゴリラのためのプレゼンテーションをしよう。同じくゴリラのむろふし&フジコ、ゴリラ大好きシロちゃんという強力なエンジンを得て共同イベントを開催しました。

「ゴリラカフェをやりたい」

今日日一般的な家庭において、メイドが生活に関与するということはまずない。丸っきりゲームや漫画の中だけの存在。にも関わらず、このメイドという概念がここまで市民権を得て久しいのは、メイド喫茶というシステムが息づいているからである。

極々一部の限られた金持ちにのみ有する資格があり、本来であれば決して触れることのない彼方の存在メイドさんが、こうして身近なレイヤーにまで下りてきて我々に謙ってくれる───「おかえりなさい、ご主人様」持たざる者の無意識な嫉妬心、嗜虐心を優しく愛撫する、計算され尽くした緻密なフレーズだ。

絶対数が少ない我々ゴリラ。関わる機会の少なさから、社会からしてみればワイヤーフレームめいた輪郭しか持たない胡乱な僕らが、テクスチャーを得るための最短経路としてカフェを選択したのは、まさに必然の流れであったと言えよう。「ウホウホ、ウッホッホ」野性味の中にある、確かな暖かさ。日常では得られない興奮と発見のアンサンブル。ゴリラとカフェの核融合。


早速シロちゃんがゴリラカフェのレイアウトを手掛けてくれた。粗雑な囲いの中が我々ゴリラのメインステージだ。蜘蛛の巣が張り、植物が絡み付く柵は、所謂カフェの小綺麗なイメージとは大きくかけ離れる。ゆったりとお茶が飲めると思うな、ジャングルには椅子も机も存在しない!安らぎや癒し、そんなものは燃やして捨てろ。自然の厳しさを身を以て感じて頂く新機軸のスタイル。

オープンにあたり、まずは店名を考えねばならない。この血で血を洗う軽食店業界、生き抜いていくためには、新規顧客の獲得はマストなミッションである。リピーターの確保も重要だが、まず母数を確保しないことには話にならない。一見でのインパクトを与え、つい足を運んでしまいたくなるようなキャッチーなネーミング。求められるのはそういうセンスだ。

「となりのゴリラ」

「崖の上のゴリラ」

「シロとゴリラの神隠し」

「ゴリラの墓」

「るろうにゴリラ」

「GODRILLA」

成功の秘訣は歴史に学べ。優れていると思うものは積極的に受容し、吸収する。そんな僕らの貪欲さが見てとれるシーンだ。良いものには理由がある。我々の胸中にあるのは偉大な先達へのリスペクト、その一点である。

熟慮に熟慮を重ねた結果、『ゴ★ゴ☆ゴリランド』に決定しました。親しみやすさの中にミステリアスな野性が仄見える。より良いスタートダッシュを切るため、店名が決まった後も幾度となく打ち合わせを行う我々に余念はない。光陰矢の如し。あっという間に月日は流れ、いよいよオープン当日を迎えた。やれるだけのことはやった、あとはただ、体を動かすのみ───ぺけぴーたちの長い夜が始まる。


「ふすま大喜利します」



ふすま大喜利とは───司会者(今回はシロちゃん)から投げ掛けられるお題に対し、五カウントの猶予の後に開かれる襖が閉じきる前に答えを出す。古代ローマの時代から脈々と受け継がれてきた由緒あるメソッドだ。

「ぺけぴー!前へ!」

座長のシロから指名がかかる。呼ばれた者は直ちに襖の裏へとスタンバイしなければならず、当然そこに拒否権は存在しない。己の順番をただ震えて待つしかない様はさながら子羊のようだ。ゴリラだけれど。

公開処刑場もかくやの冷たい威圧感を放ちゴリラたちを待ち受ける襖という名のエグゼクター。ゴルゴダの丘…ぺけぴーは誰に聞こえるともなく呟いた。

「問題!」

昨今のテレビ業界では当たり前に横行している予定調和のPing-Pong、所謂『ヤラセ』は、ことこの場においては存在しない。我々アンサーゴリラ達も、お題を知るのは観覧者と同時である。笑いは秩序の中ではなく、混沌の中にこそ生まれる。ひりつくゴリラの臨場感がスペクタクルに繋がるのだ、と。誰だ、このクソッタレたシステムを考案したのは。私だ。自分と仲間の首に嬉々として荒縄を巻き付ける、スーサイド野郎ぺけぴーです。

「話題沸騰の旅芸人150スキル!一体どんなスキル?」

時間は僅かに五秒。一瞬の逡巡が死を招く。霊長類最強種、ゴリラの瞬発力が試されている。




「その効果は?」


幼稚園児か?聞いてるだけで脳みそのシワが消滅しそうなアンサー。ゴリラにエスプリの効いた解を求めるなんて、些か酷なことじゃあないか。

「鍋に入っていたら嫌なものは?」


乾坤一擲、私の持ちうる最大のカード。私の脳内シミュレーションではこれで未曾有の大爆笑が巻き起こる。懸念点はオープニングの入場時、既にこのネタを披露しているという点。


「w」 「ハハ」 「?」 「うん」

ただ死ぬよりも辛いことがある…世の中というのは得てして非情であり無慈悲だ。

「これにてふすま大喜利を終了します!」

止まない雨はなく、明けない夜はない。永劫続くかに思われたこの煉獄の刻に、漸くピリオドが打たれる。満身創痍のゴリラ達。磨耗しきった彼らの心。帰りたい、ジャングルに帰りたい。ジャングルこそが僕らのオアシス、心の楽園…


「ウホウホ!」

「ウホウホ!」

「コジンジョウホウホ!ゴホウ」

ふすまと座布団の束縛から解放されしゴリラたち、歓喜の咆哮。滾る野性を全身で受けるゲスト各位のウケは良く、「ここが一番おもしろい」という身に余る評価も頂いた。ふすま大喜利とは一体何だったのか。


「ウ、ウホ…ウホウホ…ウホウホ!ウホウホ!ウホウホ!」

ふすま大喜利中、ただ冷めた目で我々を見つめるばかりだった同族プラン。野性を擲つことで市井に順応した新世代ゴリラの彼もまた、気付けば横に並び、理性をかなぐり捨てて吼えていた。昂る本能の制御がついに効かなくなったのだ。おかえり…

「ウホウホ!ウホウホ!」

「ウホウホ!ウホウホ!」

空気が震え、大地が揺れる。加速する心臓の拍動、揺り起こされるプリミティブな衝動。


「ウホウホ!ウホウホ!」

「ウホウホ!ウホウホ!」

いつからか、ゲスト達も雄叫びをあげていた。絶滅危惧種、弱小種族であるゴリラたちの熱風が、フロア内を凌辱する。熱と狂乱のケイオス。全は一、一は全。種族という垣根を越えて、我々は全体で一体のゴリラと化す。ゴリラ大好きシロちゃんはこの美しい光景を前に一人静かに涙した。

そして喫茶『ゴ★ゴ☆ゴリランド』はしめやかに閉店した。僅か数時間で一気に老け込んだ三体のシルバーバックたちは再び各々のジャングルへと帰っていく。次はもうちょっと僕らに優しい企画にしよう、その思いだけを胸に。


おわり。
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