蘇生~生き返り地獄~

ザオラルをテーマにした、人を選びまくるショートショート集その弐。



【生き返り地獄】

かつて勇者の手によって迷宮に封じられし魔王に、二人の冒険者が挑まんとしていた。

「愚カナ人間ヨ。コノ魔王に挑ンデコヨウトハナ。ソレモ、タッタ二人デ。真ニ、愚カダ。クカカカ」

魔王バラモス。闇に堕ちた竜族の末裔。幾千の国を滅ぼし、幾万の冒険者を葬り、世界を恐怖に陥れた絶望の権化。それから放たれる凄まじい覇気に、僅かとは言え身体を強張らせた戦士を誰が攻められようか。

「…敵は魔王、掛け値なしに強敵だ。流石にやられちまうかもなあ」

「安心しなジュドー。何度死んだって、すぐにおれが蘇らせてやるさ」

「へっ。心強いぜ、大僧正様よ。じゃあ行くぞ!」

バトルマスタージュドーは魔王バラモスへ捨て身の攻撃を仕掛ける。防御を一切顧みない突撃に裏打ちされた相方への信頼。両手に持った二対の剣を渾身の力で振り抜く。魔王の身体は金属を思わせる頑強さだったが、そこに傷を付けるジュドーの力量は中々のものだ。

「フンッ。コザカシイワッ!」

魔王の必殺の手刀がジュドーを襲う。躱す間などない。恐ろしい速度で振り抜かれた右腕は、ジュドーの土手っ腹をいとも容易く貫いた。

「ガハッ」

引き抜く際、魔王はジュドーのはらわたを掴み、そのまま抉った。ずたずたになった内臓が辺りにばら撒かれる。あまりにもあっさりと、ジュドーは事切れた。

「まだだ!ザオラル!」

僧侶プロンキアが蘇生呪文を放つ。発現までの異常な速度。僧侶としての極限に彼は居た。失われた内臓がみるみる再生していく。即死した筈のジュドーが、次の瞬間には息を吹き返していた。しかし呪文の特性か。完治には至らず、傷口は中途半端に開いたままだ。

「…っ痛ェ、くそがぁ!」

ジュドーの奥義『天下無双』。これまであらゆる敵を破ってきた、神速の六連撃。魔王の身体から血が吹き出す。しかし、深くない。おれの全力が、通用しない。ジュドーの閉じきっていない傷口から内臓が零れそうになる。ジュドーは激痛で顔を歪ませた。

「消シ炭ニナレ!」

魔王の口腔から灼熱の炎が吐かれる。

「ぐあっっ熱っつうううあああああガアアアア!」

ジュドーの全身が炎に包まれる。肉焼き骨焦がす邪竜の業火。肌も肉も内臓さえも忽ち炭化し、ボロボロと崩れ落ちていく。後に残ったのは、黒ずんだ骸骨。

「まだだ!ザオラル!」

骸骨から肉が隆起し、血管が張り巡らされていく。内臓、そして筋肉が生成され、ジュドー三度(みたび)息を吹き返した。しかしやはり完全には治らず、彼は全身がケロイド状の人体標本となっていた。

「は、はやくベホイムを…」

「イオグランデ!」

魔王に慈悲は存在しない。圧倒的なエネルギーの大爆発がジュドーを襲う。

「アバーッ!」

その衝撃の凄まじさはとても人間の耐え切れるものではない。ジュドーの肉体は爆発四散し、辺り一面に粉々の肉片が降り注ぐ。

「まだだ!ザオラル!」

プロンキアの蘇生呪文。流石は魔王、ジュドーがここまで殺されたのは初めてだ。しかし、おれが居る限り、ジュドーは何度でも起き上がる。不死の戦士を前に、果たして何時まで戦い続けられるかな?

「も、もう…もういやだ…」

一方、耐え難い痛苦を繰り返すジュドーの心は既に折れていた。死んでも再び蘇らせられることが、これほどの地獄だとは。恐ろしい。ザオラルが恐ろしい。頼れる相方が、プロンキアが恐ろしい。

「クアアアアアアッ」

魔王の全身から冥界の瘴気が吹き出した。あらゆる物を腐らせる大技、『ネクロゴンドの波動』。半身が蘇生しきっていないジュドーに避ける術は無い。

「ギャアアアアアアアアバアアアアアアアボボボボボ」

ブスブスと音を立てて、ジュドーの肉体が崩れていく。紫色の煙が上がる。自慢だった黄金色の髪が全て抜け落ちた。身体を支える脚が曲がり、べちゃりと地面に倒れる。やがてジュドーの全身はどろどろの肉泥と化した。

「まだだ!ザオラル!」

肉泥から人型が浮き上がってくる。肉を滴らせながら、ジュドーはすぐさま剣を握った。

「うおおおおおおおおもうやめろおおおおおおおおお」

ジュドーの奥義『天下無双』が、プロンキアをバラバラに切り刻んだ。

おわり。
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