蘇生~三ヶ月~

ザオラルをテーマにした、人を選びまくるショートショート集その壱。



【三ヶ月】

「ピピコ…!しっかりしろ…ピピコ!」

「ノージ…ごめ…ん、ね…私、もう…ノー…いま…、あり…と…。……。………」

「ピピコ、ピピコオッ。うわああああ」

名も無き洞窟の最奥部にて。戦士ノージの目の前で、魔法使いのピピコは息を引き取った。きらびやかな装飾の施された宝箱。不用意に開けたそれがミミックであったと気付いたときには、ピピコの脇腹は大きく食い千切られていた。ノージもまた決して浅く無い傷を負っていた。眉間から右頬まで大きく抉れ、右目は開きそうに無い。

僕が宝箱を開けていれば、こんなことにはならなかったのに…ノージの胸が悔恨で埋め尽くされる。彼は、ピピコのことが好きだった。愛していたのだ。この冒険が終わったら、打ち明けるつもりだった。しかし、それはもう叶いそうにない。ピピコは、もう…。

ノージの目が熱くなり、涙が溢れ出す。潰れた右目からも。静かな嗚咽が洞窟内に木霊する。

「…ピピコ。待っててくれ。おれが必ずお前を蘇らせてみせる。約束する。だから…それまで、待っててくれ」

冷たくなったピピコの唇にそっと口付けると、ノージは洞窟を後にした。涙はもう流れておらず、代わりに確かな決意がその瞳に宿っていた。



……

………

「ピピコ、待たせてしまって、すまない」

三ヶ月後。ふただび洞窟にやってきたノージは、戦士から僧侶へと転身を果たしていた。血の滲むような努力を経て、本来であれば三年は掛かるであろう蘇生呪文の習得を、ノージはこの僅かな期間で成したのだ。すべては、愛するピピコを蘇らせるために。右目の傷はあえて治療せず、そのままにしてある。ピピコを守れなかった、自分への戒め。

「生命を司る精霊たちよ…汝らの力、我に貸し与え給え…」

呪文の詠唱を始めたノージの足元に、魔方陣が形成されていく。優しく暖かいエネルギーが収束されていき、魔方陣はより輝きを増す。

ピピコ…。在りし日の思い出。色褪せていたそれに、色が戻っていく。見たことも無い景色を求めて、二人で色んなところを冒険した。宝箱を見つけては大喜びし、開けてからっぽなのを知ると、君は地面を転がり回って悔しがってたな。うっかり君の水浴びを覗いてしまった時は、顔面が変形するかと思うぐらいにぼこぼこにされたっけ。強敵に襲われ、僕が大怪我を負ったとき、君は涙ぐみながら看病をしてくれた。感情豊かで、まるで向日葵のような、そんな君が好きなんだ。

「ザオラル!」

まばゆい光がピピコの亡骸を包み込む。生命のエネルギーがピピコの体に流れ込んでいく。また君の声が聞ける。そしたら、僕は君にプロポーズをしよう。

そして彼女は、息を、吹き返した。

「ノ"、オォ、ジ」

「コワイ!」

ノージは手に持った棍を、三ヶ月前はピピコだった、くさったしたいの頭へと全力で降り下ろした。

おわり。
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